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「すき、」
真っ暗な部屋で、わたしはいつものように呟いた。
なぜ真っ暗なのかというと、さっきわたしが開けたカーテンも窓も、すぐさま彼が乱暴に閉め切ってしまったからだ。
外は暖かくて、笑ってしまうくらいにいい天気だというのに、遮光カーテンで閉ざされた彼の部屋は暗い。
もうすぐ春だというのに、寒い。
きっと彼はもうすぐ春が来るってことさえ、知らないんだろうなぁ。
わたしがぼんやりとそんなことを思っていると、ははっ、と彼が乾いた笑い声を上げて立ち上がり、座っているわたしの髪の毛を掴んで引っ張った。
いたい。
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