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「ちがう、わたし、離れたりなんかしないよ。出て行かない。
すきなんだよ。
さっきのはどの質問から答えようか迷っちゃっただけで―――、」
「うるさいっ!!!」
彼がしゃべっている途中で叫んで、髪の毛を掴んだままわたしをベッドの方へとはっ倒す。
自分の髪の毛がぶちぶちと抜ける音がした。
彼はあぁぁあああああ、もうぅううううううう!とうなり声を上げて、自分の頭をかきむしっている。
わたしはそんなふうにしたら、彼の頭皮が剥げてしまうんじゃないか、とハラハラしてそれを見ていた。
彼は困ったり、怒ったり、悲しくなったりすると、いつもこんなふうにうなり声を上げて、自分の頭をかきむしる。
でもしばらくするとちゃんとしゃべれるようになるし、いままでわたしの頭皮はともかく、彼の頭皮が剥げたことはないので、わたしはただそれを黙って見守った。
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