二人乗りの自転車

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 きゅっと裾が握られる。  「ちゅーしましょうよ」  「はぁ?」  今度こそ驚嘆の奇声が口を突いた。  何を言い出すこのバカは。  「…しちゃ、駄目ですか?」  また両の目がうるうると潤み始める。  何でこんなやつと付き合ってるんだろう。  一瞬不思議になってまじまじと織科の顔を見つめた。  顔だけ言えば確かに美形で、『女の子なら』告白されて喜ばない子なんかいないだろう。  いないだろうけど。  なんで俺に白羽の矢が突き立ったのか。  だいたいにして付き合い始めた理由も曖昧だ。  陸上競技場で、告った織科は、『断れば泣くぞ』と言わんばかりだったのだ。
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