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きゅっと裾が握られる。
「ちゅーしましょうよ」
「はぁ?」
今度こそ驚嘆の奇声が口を突いた。
何を言い出すこのバカは。
「…しちゃ、駄目ですか?」
また両の目がうるうると潤み始める。
何でこんなやつと付き合ってるんだろう。
一瞬不思議になってまじまじと織科の顔を見つめた。
顔だけ言えば確かに美形で、『女の子なら』告白されて喜ばない子なんかいないだろう。
いないだろうけど。
なんで俺に白羽の矢が突き立ったのか。
だいたいにして付き合い始めた理由も曖昧だ。
陸上競技場で、告った織科は、『断れば泣くぞ』と言わんばかりだったのだ。
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