11人が本棚に入れています
本棚に追加
鼻で溜息をつき、再び織科の顔を見上げた。
ぽやっと開いた唇はぷっくらしていて、水で濡れたみたいに見えた。
上唇とした下唇の間から白い前歯が覗いている。シミも黄ばみもない真っ白な歯。
「せんぱい」
それが微かに動く。
相変わらず、目には涙の膜が張っていて、近付いた顔にやっぱりコンタクトなんて付けていないことを知る。
「…お前、漕げ」
「え」
閉じかけた織科の瞼が通常の1.5倍の大きさで開かれる。
最初のコメントを投稿しよう!