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駐輪場に着きかけたところで、真尋の後ろから足音が追ってくる。
「待って下さい」
織科の長い脚なら、真尋に追い付くことなど容易だった。
「何だ?」
ぶっきらぼうな物言いに織科が子犬みたいに俯き、上目に真尋を見た。
「先輩、一緒に帰りましょうよ」
「…ラーメン、食いに行かないのかよ」
鼻先で溜息を吐いて、自転車の鍵を探した。学生ズボンのポケットを探り、ブレザーのポケットを探って鞄の中に入れたことを思い出す。
「たまにはちゃんと同学年(タメ)と付き合え、友達いなくなるぞ」
がちんと音を立てて鍵を解除し、自転車を引き出す。
前籠にエナメルバックをいれて、サドルに跨がる。
「今からでも間に合うだろ」
そのままペダルを踏み込む。やたら重い。
「んんっ…」
力んで踏み込み、横目にギアを確認する。いつも通り一番重い5段に設定されている。
それでもこんなに重くなかったはずだ。
「ん―――…っ」
ぎっ、ぎっ、とペダルが軋む。
「放せよ…」
いい加減自分の力で振り払うことは無理と判断し、背後を振り返る。
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