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長身の織科の旋毛が見えた。
自転車の荷台をがっちりつかんで長い脚が踏ん張っている。白い大きめのカーデガンが揺れていた。
「だって、離したら先輩、俺のこと置いてくじゃないですか」
振り返った真尋の顔を織科は見ようとしない。
じっと顔を伏せたままで両足を踏ん張っている。
「先輩」
その鼻声を聞いて真尋はまたか、と空を仰いだ。
もう日が暮れて足元から夜が来ている。
「一緒に帰りましょうよー」
声が震えて、荷台の上にぽつぽつと涙が落ちる。
だから語尾を伸ばすな。気持ち悪い。
その伸びた髪を引き掴み、無理やり顔を上げさせた。
「お前の涙腺ってどうなってるんだよ」
街灯の光に反射して、織科の睫毛が輝いていた。
「いや、これ、はっコンタクトがずれて…」
「…お前コンタクトなんかしてたんだ」
意外。
本当にレンズが入っているのか確認したくて髪を掴んだ手を、織科の頬に添えた。
涙の膜で潤んだ瞳を覗き込む。切れ長で美形の部類に入る瞳。
女の子が好きそうな顔。
「ら、裸眼、ですっ」
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