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前方を向いた真尋のブレザーの裾が張る。
「せんぱい」
相変わらずの鼻声は、また泣き出したのか、それとも鼻詰まりなのか。
「もうラーメン食いに行けとか言わないから、早く帰ろうぜ」
耳に突っ込んだイヤホンを抜き、首にぶら下げた。
「そうじゃ、なくて」
「なんだ」
振り返りブレザーの裾を握った織科の指先を見た。
『走る』ことしかしてこなかった織科の指先は女の子みたいに綺麗だ。指が長くて、掌が大きい。ピアノとか、やってそうな手。
「そうじゃなくて、」
ゆっくり自転車を引くと、織科もついて歩き出す。
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