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「明日までもつかどうか……」
青白い顔をした医師は控え目に言った。
「そうですか」
私は感情を交えぬ声で言って、部屋を出た。
瞬間、どうにもならない恐怖が私を襲った。
長く生きた方なのだ。生きすぎた位なのだ。妻が余命一年と宣告されてからもう二年経っている。
妻もそろそろ疲れたのだろう。力強く頷いてみるが、恐怖は消えなかった。
妻が寝ている部屋に戻ると、ちょうど上半身を起こして本を読んでいる所だった。
私は妻に悟られないよう出来るだけ気さくに声をかけた。
「今日は何の本を読んでいるんだ」
すると妻はぱたんと本を閉じ、足元に投げてしまった。
「私に、何か言う事でもあるんじゃない」
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