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しかし妻は、私の態度の変化など歯牙にもかけず、窓の外に目をやって静かに言った。
「私は、もうそろそろ死ぬのでしょう」
急に妻の白い顔が、今にも消えてなくなってしまいそうな儚いモノに思えてきて、私は首を横に振った。
「死ぬわけがない」
自分にも言い聞かせるつもりでそう口にするが、病室の白い壁にむなしく吸い込まれていった。
重い沈黙が次第に広がり、どうしようもなくなった私は本当の事を話す事にした。
「実は、医者に嘘をつかれたんだ」
妻は何も言わず、外を眺めている。
「医者が、お前が明日までもつかどうか分からないなんて嘘をついたんだ」
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