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「ここ…かな?」
日の光が暖かい、春先の昼下がり。
大きな民家の前で、緑っぽい髪をした男の子が、そう呟いていた。
男の子は表札を見て、
「うん、ここでいいんだ
でも…緊張するな…」
強張った顔でインターホンを押す。
ピンポーン
『…………』
返答は無い。
「…あれ?」
首を傾ぐ男の子は、もう一度押してみた。
ピンポーン
『………………はい』
しばらくするとインターホンの向こうから、やっと聞こえるような、か細い声が返事をした。
すると男の子の表情がパッと明るくなって、軽い挨拶を投げかける。
「あ、あの!
ボク、今日からお手伝いとして来た、シオンっていいます!
えと…エリさんですよね?」
シオンと名乗った男の子の、その朗らかな笑顔に声の主は少し間を置いて、
『そう、よ……父から話は聞いたわ
……………入れば?』
やはりか細い声でそう返事した。
「あ…は、はいっ!お邪魔します!」
酷く小さな声に入る事を勧められて、シオンは家に入って行った。
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