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エリの住んでいる家は、とても広かった。
長い廊下にいくつもの扉があり、その延長線にさらに大きなリビング。
2階に通じる螺旋階段は、シックな中にもモダンな雰囲気が感じられる。
さらには、家のいたるところにアンティークの家具や花瓶など、お洒落に並べられている。
そして床や窓はどれもこれもピカピカで、塵一つ落ちていない。
別の言い方をするならば、この家にはあまり生活感が無かった。
シオンは今、広い玄関に立ち呆けている。
「…はわ~」
玄関にも、これでもかと言わんばかりの装飾品が並べられていた。
そしてどれもこれも、高級品が放つ独特の威圧感が、静かに家の空気を満たしていた。
「豪華な家だな~…
あの壺とか、いくらするんだろう?」
などと呟きながら、シオンは自分の背丈ほどもある、大きな壺を眺めた。
「……その壺はただの傘立てよ」
すると、不意に奥から出てくる声が言った。
声の主の少女は、肌は紙のような色白で、体つきは華奢…と言うより痩せこけている。
顔は美人ではあるのだが、どこか疲れきったような倦怠感が、その少女の表情に貼り付いていた。
「えと…あなたが…エリさん…?」
「……………そう、ね」
まるで他人事ように、地の底から響いてくるようなか細い声で、少女 エリは肯定した。
「あ、あの…」
「………上がれば」
「はい、お邪魔します…」
「…二度目ね」
「そ、そうですね!あはは…」
シオンは苦笑を浮かべ、やや緊張しながらも、きびすを返して奥へ歩いてゆくエリの後ろについて行った。
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