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「…あん?ケガしてんじゃねぇか」
不意に、巨人はシオンの膝と、鼻の頭を見て言った。
シオンが指された所に眼をやると、少し皮膚が擦り剥けて、赤い血が滲んでいた。
気がついてしまうと、擦り剥けた場所がヒリヒリと痛みだす。
「え?…あ、ほんとだぁ」
「なんだ、気がついてなかったのかぁ?」
巨人は気遣わしげに、自身のケガに気がついてなかったシオンに、そっと苦笑した。
「どれ、手当てしてやるから、そこ座りな」
巨人は、花壇の縁にシオンを座らせて、その大きな手には小さな、ペンライトのような物を取り出す。
因みに、消毒液やマキ〇ンなどはもう存在すら忘れられ、この頃にはペンライト型の消毒機がある。
超微粒子の消毒液が光源から噴出され、消毒してくれる。
現在は回転寿司屋などに公衆電話ぐらいのボックスがあるが、それがこの消毒機に当たる。
「いててっ…」
しかしどれだけ便利になっても、小型化しても、消毒液がシミるのは、今も昔も…そして未来も変わらない。
「…ん?
ボウズ…PD(パーソナルドロイド)か?」
ふと、何かに気付いたのか消毒していた巨人が、訝しげに訪ねてきた。
シオンはそれに頷いて、歯を見せて笑った。
「そうだよー、わかんなかった?」
「おぉ、こりゃあ驚きだ!
全身皮膚で覆われてるPD見たのは、初めてだぜ!
どこの工場出身だ?」
巨人は妙に感嘆して、一気に言葉を放って、出身を訪ねてきた。
「ボクは、緑ヶ丘研究所って所で創られたんだ」
創られた場所に愛着があるのか、にこにこと笑顔で返すシオン。
「研…究所?
てぇ事ぁ…まだプロトタイプな訳か?」
プロトタイプとは、試作品…又は実験機の事を示す。
「そうだよ
博士がね、後何年かしたら、ボクの弟か妹が創られるかもしれないって♪」
「へぇ、じゃあ楽しみだな!?」
「うんっ♪」
シオンは期待に光る眼と、満面に咲く笑顔で返した。
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