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――朝。
キッチンから、調理の音がリズミカルに聞こえてくる。
今となっては全自動で料理を作る事は可能だが、やはり細かい味付けや繊細な部分は、人間でなければ出来ない所もある。
広い対面式キッチンに立っているのは、シオンだ。
台に乗って気持ち良さそうに、鼻歌を歌いながらネギを切っている。
シオンの周りでは、自動のアーム達がせわしなく働いている。
「――そろそろ、エリさん起こして来ようかな」
シオンは台から降りて、2階のエリの部屋に向かう。
温かい、朝の陽光が目を射す。
鳥の声が、遠く耳に飛び込んで来る。
「ん、ん…」
ベッドから身を起こし、寝ぐせのついたボサボサの髪をかきむしるエリ。
「…ふわっ…
……8時…か…よく寝た」
もう10年の付き合いになる目覚まし時計は、ただ押し黙って、時刻を告げていた。
エリは柔らかい布団に包まれたまま、しばらくボー…っとしていると、突然ひとりでに扉が開いた。
「おはよーございます♪
よく眠れましたかっ?」
「…おはよう…ノックぐらいしなよ」
エリは唐突に扉を開けたシオンに、ボサボサの頭で朝一の文句を言う。
すると、シオンは少し唇を尖らせて、ムッとした表情を作った。
「しましたよぅ
返事が無いから、開けてみたんです~」
「そ…そっか、…ごめん」
「えへへ、良いですよ♪
それより、朝ご飯にしましょう?」
シオンは朝から元気で、清々しい笑顔をエリに向けた。
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