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気持ちの良い昼下がり。
シオンは、エリの部屋の整理をしていた。
もうかなり掃除してないらしく、部屋の隅にはうっすらホコリがたまっていた。
それでも、部屋の中心の辺りは割と綺麗だし、ベッドはしっかりとメイクしてある。
タンスの上に居座っている、ホコリを被った大きなぬいぐるみは、古代遺跡に眠る巨人を想像させた。
「――じゃ、床の掃除は頼むね
ボクは窓を拭くから」
『了解、シマシタ』
シオンは足下の掃除機に命令して、水の入ったバケツを手にした。
掃除機と言っても、現在のように車輪のついたタンクにホースと吸い込み口がついたような、寸詰まりの象のような物ではなく、タンクの下に吸い込み口が直接ついたロボットである。
命令すれば人工知能が働いて、床掃除はもちろん、窓拭きから片付けを自動でしてくれる優れものだ。
見かけとしては、学校などにあるプラスチックのゴミ箱の蓋…そんな雰囲気だ。
「ちべたっ
春にはなったけど、まだ水は少し冷たいなぁ…」
小さな手で、ぞうきんを絞りながら呟くシオン。
因みにぞうきんはまだ存在する。
『オ湯デヤッテモ、汚レハ取レマスヨ』
背後から、掃除機がモーター音を唸らせながら言ってきた。
「じゃ、次水汲んでくる時は、お湯にしようかな♪」
シオンはイスに乗りつつ返事した。
窓拭きが終わって、次は本棚の整理。
厚い本や薄い本が、大きな本棚に沢山詰まっている。
「へぇ~
エリさんって、難しそうな本読むんだな~」
そう言いながら何となく、丁寧な装丁をした分厚い一冊を手に取るシオン。
「これ………何だろ?」
「エリさーん」
シオンが大きな本と分厚い本を持って上から降りてきた。
いつも通り、ソファでテレビを観ていたエリがゆるりと振り返る。
「…どうしたの」
「あの、これなんですか?」
シオンが手に持っていたのは、アルバムと日記だった。
「日記は分かるんですけど…
この大きな本は、なんですか?」
「アルバムって…知らない?
…写真がいっぱい貼ってあるでしょ
撮った写真を、その本に貼って…思い出を残しておくの」
「へぇ~♪見ても良いですか?」
シオンは目を輝かせて尋ねる。
「…うん」
「あの、良かったらエリさんの昔の話も、してくれませんか?」
少し意外な注文だったのか、エリは一瞬考えて、
「良いよ…でも、つまんないよ」
「良いですよ♪話してくださいっ♪」
屈託の無いシオンの笑顔。
「………そ」
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