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…でも、これからは違う。
私は…変われる。
根拠は無いけれど、そう思う。
変わりたい…前みたいに、笑いたい。
一瞬そう思えただけでも、凄い事だよね…?
もちろん…シオンのおかげ。
そして、シオンを家へ来させてくれた、父のおかげでも…ある。
「エリさん…」
話を全て聞いた後、シオンはそっと、エリの腕を握った。
シオンの大きな眼は、こぼれ落ちそうな涙で揺れていた。
「だから……つまらないって、言ったでしょ?」
エリが日記とアルバムを閉じながら言う。
するとシオンが首を振り、
「いいえっ、お話が聞けただけでも良いですよ?
ボクはエリさんの事、もっと知りたいです♪」
何の恥じらいも無くそんな事を言うものだから、エリの顔が薄ら赤くなってくる。
「…もぅっ」
照れ隠しか、シオンの腕をはがすエリ。
しかしまたニコニコ顔のシオンは、くっついてくる。
「えへへっ♪」
数回そんな事を繰り返し、エリが唐突に口を開いた。
「…そうだ
シオン、写真……撮らない…?」
「写真、ですか?」
エリにしがみついたままのシオンが、眼を瞬かせて聞き返した。
エリの家の玄関前、エリがいつもの仏張面で立っている。
そしてその直線上に、三脚で立つカメラがある。
「エ~リ~さ~ん、笑顔笑顔!」
「……そんな事言ったって…」
「もぉ~…じゃ、いきま~す!」
シオンは元気良くそう言って、エリの横に駆け寄り、また腕抱きついた。
今度は何故か、何も言わないエリ。
「…せ~の!1+1は~っ!?」
『…にぃーっ!』
―――カシャッ
リビングに、桜をバックにした、少女と女性の写真が飾ってある。
そして、その横に今さっき撮ったばかりの、真新しい写真が置かれた。
新しい写真は、大きい家をバックに、髪の長い少女と、呑気そうな男の子が写っている。
そして、そのどちらの少女も恥ずかしそうな顔をして笑っていた。
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