散歩という進歩

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少し遠くから、シオンを呼ぶ声が聞こえて来る。 「…にょっ?」 シオンが声が聞こえる方向へ振り向くと、大柄な青年アンドロイドが大きく手を振っていた。 「ダンク!ダンクだぁ!!」 「…?…知り合い?」 エリも彼に気づいて、何気なく側に立つシオンに尋ねた。 「はい!この間話した、親切な人です!」 「…あぁ、話してたね」 「わーい♪ダンクだー♪」 走って行ってしまったシオンを追って、エリはダンクに近づいて行った。 「久しぶりだなシオン! 元気だったか?」 相変わらずのぶっきらぼうな口調で、シオンの頭をぐしゃぐしゃに撫でるダンク。 子犬のように、人懐っこい笑顔を浮かべるシオンは、それに負けじと元気に答えた。 「うんっ!ボクは元気だよ♪」 「そっかそっか!…あん?その子は?」 「あ、ボクがお世話になってる家の、エリさん♪ とっても優しい人なんだよ♪ エリさん、この人はこの間親切にしてくれたダンクです♪」 「…こんにちは」 「はは、気にすんなよ! 俺はただ、お節介なだけだ よろしくなお嬢!」 エリの元気の無い、形だけの挨拶に対して、豪快に笑いながらダンクは挨拶を返した。 最後の呼び名が引っかかったのか、エリが変な顔をする。 (お嬢…?) 「で、こんなところで何やってんだ?」 改めて、といった感じでダンクが訊く。 「今エリさんとお散歩なんだ~」 嬉しそうにシオンが答えた。 「そっか~俺は今仕事中だ♪ 休憩中だけどな」 「…何の、仕事なの」 意外にも、エリが質問した。 ダンクは明るい気配漂う眼をエリに向け、何のためらいも無く答える。 「大工、建築屋さ! 今日は、公園の新しい休憩所を作ってる最中だ なかなか立派なもんだろ?」 笑顔でそう言って、背後の大きな建物を親指で指した。 「へぇ…仕事、楽しい?」 「ん?あぁ! 確かにお頭はうるせえし厳しいしすぐ殴るし… 材料は重いし、疲れるぜ? けどよ、俺はすげー楽しいんだ なんつぅか…充実してるってのか? とにかく、楽しいぜ♪」 ダンクは胸を張って、誇らしげに語った。 その表情は、紛れもなく“職人”の表情だった。 「………そ」 「おぉい、ダンク~! いつまで休憩してんだ―っ!」 突然ダンクの背後、建築現場から頭領のだみ声が飛んで来る。 仕事を再開するようだ。 「うわっと!今行きますよー! じゃな!シオン、お嬢!」 「うん、またねダンク!バイバーイ!」 手を振って、ダンクは現場へと駆け戻って行った。image=58105046.jpg
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