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指輪
何気なく開けた引き出しの中にそれはあった
輝きはなく、色くすんだ指輪
手にした途端蘇るあの日々
メンソールの煙草に火をつけて
カーテンの隙間から光が射し込み煙が踊る
人差し指にはめた指輪を眺め光に手をかざす
忘れかけていた日々を
今こうして思い出す
幸せに満ちていた
ただ側にいるだけで良かった
強く抱きしめあいkissをして
存在を確かめあった
今何故か涙は出ない
時間が経ちすぎたんだろうか
目も口も髪も手も
全て好きだった
過去の言葉しか出て来ない
あの頃の気持ちはどこへ行ったんだろう
失ったものを取り戻すのは難しい
新しいものが欲しいわけじゃない
ただ今想う気持ち
忘れてはいけないものを
心に持ち続ける大切さを
この指輪が教えてくれた
煙草の灰が落ち
シャツの裾で少し磨き
もとの引き出しへ戻した。
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