屋上で。

3/5
前へ
/129ページ
次へ
「じゃ…直樹?教室に戻ろっか。」 「うん。」 …あれ? なんだろう… なんか胸が変なかんじ。 「寂しい」?違うな… ああ…そうか。 「ねぇ、由紀…」 「何?」 「ちょっと…ハグしてもいい?」 「え!?…うん。いいけど…どうしたの?」 「ちょっと…ね。」 そして僕等はハグをした。 なんか…柔らかい。 ぬいぐるみみたいだな。 実際、心臓がどうにかなるんじゃないかってくらい恥ずかしかったけど、そう考えたら、落ち着いた。 うん。胸の変なかんじも落ち着いてきた。 「ふう…落ち着く…。」 「そ、そうなの?」 …声がうわずってる? いい事思いついた。 僕は、ゆっくり、由紀の耳もとに顔を近づけ… 「由紀…」 「ふえ?」 ささやくように、こう言った。 「大好きだよ。」 「………」 あれ?反応がない? 体をゆっくり離して見てみると… 「…やりすぎたかも。」 顔を真っ赤にして放心していた。 …半分、いや8割くらい嘘なのに。 『好き』って感情すらよくわからないのに、大好きだなんて、なんて馬鹿馬鹿しいんだろう。 キ-ン コ-ン カ-ン コ-ン 「あ…」 1時間目が始まってしまった。 でも由紀は放心したまま。 「…サボるか。」 立ったままだときついので、フェンスのそばに由紀とすわって、彼女が回復するのを待った。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加