見える姿、届かない声

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――あ、そういえばまだ連絡ないな……平気かな 《仕事》以外の事は、きっかけがないとすぐに忘れてしまうのは悪い癖かな。 ――明日また連絡してみよう そして次の日の昼、コーヒーをメーカーで作りながら電話を鳴らしてみたけど、やっぱり彼女には繋がらない。  パソコンで劇団の番号を調べて尋ねると、思わぬ言葉を受けた。 ――舞台、降りたって……どうしたんだろうか あれ程輝いてたのに降りるなんて 『いつ戻ってくるのかな、舞台楽しみにしてたのになぁ』  コーヒーを啜りながら窓を開けて外を眺めると、外は夏を感じさせる暖かい風が吹き、眩しい太陽が僕の目を細めさせる。 『…………』 ――心配、だな  数日後の次の舞台、もしかしたらと思って行ってみたけどやっぱりいなくて、ヒロインの子が悪い訳じゃないけど、なんか物足りなくて……。  舞台を途中で観るのをやめ、外で電話を掛けてもやっぱり繋がらない。 ――嫌われたのかな 繋がらない事が続くと、余計に気になって仕方がなかった。
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