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 今になって彼女の存在に気がついたのだが、驚きの顔は失礼なので努力で封じる。すぐに冷静になって状況確認する。 「クラスメイトの、十川陽香さん?」  疑問形ながら発した俺の言葉どおり、彼女は俺のクラスメイトの十川陽香さんだった。  中性的な顔立ちで姉貴とも仲のいい彼女が、同行人? 「あ……どうも」 「こ、ちらこそ」  ぎこちない挨拶を交わして、俺は再び姉貴に訊く。 「なぜ同行人? 俺たち上宮家の事情にどうして陽香さんを巻き込む必要が?」 「……あなた、本気で言っていますの?」 「本気だが」  俺が言うと、姉貴はわざとらしく溜息をついた。指を額に当てて完全に悩みこむ動作。わざとらしいな。
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