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「あなたは自分の方向音痴っぷりを見事に自覚していないのですね」 「あ……」 「今年の四月、高校生のくせに登校中に道に迷い、五時間遅刻した経歴を……」 「ストップ姉貴! わかった、自覚した、だからそれ以上言うな!」  努力で忘れていた記憶がよみがえる。その話を含めて俺の失敗談は比較的長く話題となる事が多い。  その長期話題維持の仕掛け人こそこの姉貴である。  双子の弟が犯した失敗を高々と笑う性格はたぶん一生変わらないだろう、なにせ母も同じ性格なのだから。 「まあ、これで同行人が必要な事はわかりましたわね?」 「…………」  無言の肯定をしてしまった。
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