始まりの扉

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始まりの扉

      「通?…待ってたよ。」     その子は、見覚えのあるボブカットの髪に、日の当たったような笑顔でこちらに近づいてきた。     「あ…愛法?お前…大丈夫なのか?」         「万全とはいえないけど… 走ったりしなければ大丈夫だと思う。 ボク…どうしても通に会いたくて来ちゃった。 …心配してくれた?」           「…っ…ものすごく…心配した。」       「…ごめんなさいっ…でも…嬉しいや。」       俺は、涙ぐんだ目を拭って、顔を上げた所で… 教室の窓から乗り出して、此方をガン見しているクラスメート達に気付いた。       「愛法、場所変えない?」                   俺達は場所を公園に移すと、ブランコに腰を下ろして 一息ついた。       「そういえば…愛法?その制服どうしたの?」      「お店の女の子に借りだんだ。制服って、ちょっと憧れだったから…。 本当は、通と同じものが良かったんだけど。」       「うーん。コレは、男子高校生用の制服だから…。 それに、その制服… 愛法に似合ってて、すごく可愛いと思うよ。」          俺が、そう言うと…愛法は嬉しそうに笑って頷いた。       「通が、お店まで運んでくれたんでしょ?ありがとう。」       「いや…俺は、運んだだけ。結局、運ぶ事しか出来なかったんだ…。」       「オーナーに頼んでくれたでしょう? ボク…オーナーから聞いて、すごく嬉しかったんだ。」       そう言って笑うと、愛法は話を続けた…。         「再起動するまでの間…夢を見てたんだ。 前に住んで居た所の… クリスマスで…町の路地が、家族連れで賑わっていて… すごく楽しそうだった。 ボク…おじいちゃんを責めたんだ。 何で、ボクにはお母さんも、お父さんもいないの!?って… ボク…ワガママだった。 おじいちゃんを失ったのも、通が撃たれそうになったのも、ボクのせいだ…ゴメン‥。」         「…それは、愛法のせいじゃ無いよ。 それに…ワガママって…家族だから言えるんだろ?」       「…そっか…そうだよね。」       愛法は、一瞬驚いたような顔をすると… にっこり笑って頷いた。        
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