覚醒

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身体中をバッタの大群に覆われた青年の脳裏に衝撃が走り、失われた記憶を断片的に蘇らせた。 草原を楽しそうに走る自分がいる。 その横には2人の女性。 そして、白い歯を見せる青年の姿があった。 自分がボールを蹴る。 青年は回転しながらそのボールをキャッチすると、笑顔で蹴り返す。 かたわらでは2人の女性が笑顔で自分たちに声援を送っていた。 (…光太郎…。) 青い海原を疾走するクルーザー。 そのデッキでは、先ほどと同じ顔ぶれの4人が楽しそうにはしゃいでいる。 (克美…、杏子…。) 白いタキシードを着た自分と青年。 華やかな船上パーティー。 (俺と光太郎の誕生日…。) そして…。 拘束された自分。 その横には同じように拘束された青年の姿が見える。 白いローブをまとった3人の怪人が自分たちを見下ろしている。 「これより改造手術を始める。」 一番小さい怪人は、そう宣言すると、指先から怪光線を発し2人に浴びせる。 怪人が指先を動かすたびに身体に激痛が走った。 互いに手を伸ばす自分と青年。 「光太郎…。」 「信彦…。」 そこへ飛び込んで来る年配の男。 「止めてくれ!私の息子達を返してくれ!」 (父さん…。) 懸命に怪人たちに訴える男だが、怪人たちは聞く耳を持たず男を突き飛ばした。 そのはずみで自分を拘束していた何かが外れ、猛烈な衝撃が自分を襲った。 記憶の断片はそこで途切れたが、青年は自分の名前を思い出していた。 (俺はシャドームーンじゃない…。俺は…俺は秋月信彦だ!)
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