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私は部屋の床を蹴った。
玄関を素早く通り抜け、自転車に乗る。そして自転車をこぐ足に力を込める。
目的地は…悠斗の家。
もう時間は9時をまわっていた。
が、そんなこと構わない。
悠斗の側に…居たいの!!
「悠斗ッ!!…」
「な…紗智…なんだよいきなり」
悠斗はあらかじめ外に呼び出しておいた。
私は汗だくになっていた。
夜はまだ冷えるという季節なのに。
「あたし…悠斗を助けたいの」
「…え?」
放っておけない、悠斗を助けたい、悠斗の側にいたい。
悠斗が…
好き…
そんな思いが入り交じる。
私はこの思いを胸に留めておくことが出来なかった。
こんこんと、溢れるように、悠斗に伝えたい言葉が出てきた。
「悠斗が好きで、悠斗が苦しんでるときに助けたいの。側に居たいの。もう独りで苦しまないで…お願いだから…」
私は悠斗の目を見てはっきり言った。
途中…涙が溢れそうになったけど…我慢した。
「紗智…俺…」
「悠斗…悠斗は独りじゃないんだよ…?」
瞬間…
息が苦しくなった。
緊張のせい…?
ううん…
違う…
私…
悠斗に抱き締められてるんだ…
強く、強く。
まるでその強さが悠斗の感情を表しているようだった。
私はそっと悠斗の背中に手を回した―――――
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