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ドラゴンの口からは血が滴っていた。
鮮やかな鮮血で土が濡れる。
甘く匂う果実のような風が吹き抜けた。
ただし、その竜の頭は地面にある。
頭の無い竜は切れた首から血を噴き出しながら踊り狂い、倒れる。
シュシアは目の前の光景に驚きを隠せなかった。
一瞬だった。
一瞬視界に黒い刃が映り、目の前の竜の頭を切断した。
たったそれだけで竜の首が切れた。
そして今、シュシアの目の前には黒いジャンバーに身を包んだ何者かが後ろのドラゴンの前に立ちふさがっている。
その姿は魔王よりも強く、竜よりも殺気に満ちていた。
「どうせ逃げられない……だから静かに眠るといい」
色鮮やかなワインのように滴るドラゴンの鮮血が落ち葉の上を流れる。
全てのドラゴンが黒い存在へと走る。
ドラゴンから見れば敵は蟻[あり]と等しい存在の人間。
浅はかで無力で傲慢な下等生物な筈なのに。
竜は怒りに体を任せていた。
対して黒い存在が大鎌の刃を狩るべき対象へと向け、獲物へと疾駆する。
ただ、黒い存在の走る速さはドラゴンを越し、音すら遅れてやってくる。
ドラゴン達は黒い存在の命を潰そうと炎や尻尾で攻撃を繰り出した。
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