異世界からの殉教者

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真夜中の荒野で始まりは告げる。 どこかの世界のとある場所に黒い衣を纏う人影が存在した。 命を刈り取るべく、邪魔する障害物を崩すべく人影は武器を握っていた。 黒い手に握られる長柄の大鎌。 その長さは所有者である黒い衣の人影の身長をゆうに越える。 枯れきった大地に立ち、大鎌を携〔たずさ〕えるその姿は“死神”そのもの。 そしてその死神は巨大な大鎌の柄を地面に突き刺し、目の前の人間を見つめる。 目の前の人間は五人、典型的な勇者と仲間達が似合いそうな人間達。 死神は大きく照らす満月を後ろに冷たく人間を一瞥し、小さく口を開いて外の空気を吸う。 「お前……何で魔王ごと俺の兄を殺した!」 先頭の勇者風味の青年が死神に吠えると、静かに死神は答えた。 「散々警告はした、身を守っただけだ」 そう述べた死神の声の大きさは小さくも、目の前の人には重圧に届いた。 血のような瞳を帽子とベルト状の襟の隙間から覗かせる死神。 見つめられただけで気が狂いそうになる灼眼が目の前のヒトへ視線を定めた。 「てめぇ……許さねえ!!」
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