異世界からの殉教者

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別に死神が近付いているからといって村が変わるわけでもなく、立ち話で談笑する主婦や鬼ごっこをしている子供達で賑わっていた。 少女自身も今買い物を終えて自分の家に戻るところだった。 現に少女が抱える小さな籠の中にはリンゴやブドウなどの果物が沢山入っている。 それは平和を表していた。 落ち葉の積もる芝生の上を歩き、涼しく吹くそよ風を肌で感じる。 技術が発達していない小さな村だが、この美しい村は大好きだった。 穏やかな目つきで目の前の小さな教会へ歩き続ける少女は、死神に対して願っていた。 (優しい死神だったらいいな) 頭の中で死神の姿をイメージしながら歩いていると、教会の扉に顔をぶつける。 「いたぁ……」 鈍い痛みが額に残る。 涙ぐむ少女はそう痛みを口にしながら片手で教会の扉を開け、教会の中に足を踏み入れる。 そこは礼拝堂で、一人の神父が長椅子を綺麗に並べていた。 「お父さん」 少女が目の前の神父にそう声をかけると、神父は少女へと目を移して口を開いた。
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