鬼の上司

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話は15分前にさかのぼる。 ここは渋谷。 喧騒にまみれた街。 俺の名前は『芹沢 竜也(せりざわ りゅうや)』。 大学生3年生だ。 今日は友達に「今から合コンやるんだけど、急に2人来れなくなっちゃってさぁ~。代わりに来てくれよ」という予備メンバー集めの言葉に乗ってきたわけなのだが・・・。 「・・・いねぇ。」 呼び出された居酒屋に行ったがもぬけの殻。 携帯に電話しても留守電。 「・・・大学で見つけたらぜってぇ殺す!」 「竜ちゃん。どうしよっか?」 隣からの声にハッとなる。 横を見ると見慣れた顔。 「お前も呼び出された口か。」 こいつの名前は『神鳴 純也(かんな じゅんや)』。 俺の2つ後輩の1年生。 いわゆる近所の幼馴染ってヤツだが、誰からも美少年と言われる容貌+人懐っこい性格から、みんなに好かれている。 そして女の子に人気絶大だ。 小学生の時から何度も告白されているらしい。 なぜかいちいち報告するんだよな・・・。 それが嫌みったらしく聞こえないところは純の人徳のなせる業だろう。 告白の回数が20を越えた辺りまでは数えてたのだがもうやめた。 自分と比べて悲しくなってきたから・・・いやなんでもない。忘れてくれ。 でも、すべて断っているらしい。 理由を聞いてもあいまいに誤魔化すので、深く突っ込むのはやめることにした。 「竜ちゃん。どうしよっか?」 純也がもう一度言った。 そこで気がついた。 「純を呼んだ奴がいたからみんなで逃げ出したわけか。」 純は人気者ゆえ、こいつに惹かれた女の子を口説くのは困難と判断した飢えた男どもが店を変えたってストーリーが出来上がった。 そして俺も切り捨てられた。 「やっぱり、ぜってぇ殺す!」 「竜ちゃん。どうしよっか?」 3度目の台詞。 何かを期待してるような顔でこちらを見ている。 「・・・せっかく渋谷まで来たんだしカラオケでも行くか?」 「うん!」 屈託の無い返事。 俺が女だったら1発で落ちるであろう笑顔。 ・・・神様、なんで俺にもこの容姿をくれなかった? 恨むぜ、こん畜生。 しかし合コンの予定が男2人でカラオケに変わるとは・・・。 「まぁいいか。」 確か近くにカラオケボックスがあったはずだ。 「んじゃ行こうぜ。」 俺は歩き始める。 「あー、待ってよ。」 慌てて純も追いかけてくる。 長い夜の始まりだった・・・。
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