鬼の上司

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カラオケ店に近づくにつれ、異様な雰囲気になってきた。 どう見ても『や』から始まる職業にしか見えない風貌の人たちが増えている。 「何かあったのかな?」 純が聞いてきた。 「さぁな。」 仕事柄・・・と言ってもアルバイトだが、そういう人たちに慣れている。 ちなみに純も一緒のバイトだ。 (休みの日までトラブルはごめんだぞ)とか思っているうちにカラオケ店に着いた。「この人たちもカラオケかな?」 「・・・」 カラオケ店の店員も恐る恐る対応している。 入るべきか入らざるべきかなやんでいると・・・ 「きゃぁ~!!!」 絹を切り裂くような声ってこういうのを言うのだろう。 (やっぱりこういうパターンか・・・) 見てみると、カラオケ店のエレベーターから女の子が連れ出されようとしている。 ・・・可愛い。 不覚にもそう思ってしまった。 っていうか、俺の好みど真ん中。 まつげの長い大きな目が印象的で、メイクもしてないのに透き通るような肌とピンク色の唇。 身長はそれほど高くも無く低くも無く、スラッとした感じ。でも出るトコはちゃんと出て・・・ああ、いやなんでもない。聞き流してくれ。 (どういう状況だ?) 店員はやくざの下っ端に脅されてなにもできない。 通行人は「早く警察呼べよ」とか「何々なんかの撮影?」なんて無責任なことを言ってる。 助けるか?と思った時、やくざの中に明らかに異質な存在を感じた。 (・・・こいつはヤバイ)本能でそう感じた。 純も同じようだった。 一瞬、その男と目が合った。 ・・・空虚。 それが一番ぴったりな表現だと思う。 魂が吸い込まれそうになってしまった。この感覚は・・・。 そのまま男は女の子に近寄る。 (マズイな)そう思った時。
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