鬼の上司

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グワッ! 「何見てんだ!小僧!」 下っ端が俺の肩を掴みながら言った。 「・・・。」 俺が黙っていると、 「カラオケに行くガキだろう。ほっとけや。」 別の兄貴分らしきヤツの言葉に、下っ端は「チッ!」と言いながら肩を離す。 「竜ちゃん、どうする?」 「・・・。」 助けるにしても向こうの人数が多すぎる。 しかも観衆も多いからアレを使うことが出来ない。 (後で面倒だからな・・・) 別にやくざや警察が怖いわけではない。 バイト先の上司が怖いのだ。 そこで、俺の携帯が鳴った。 発信元は・・・『株式会社リアルル』バイト先だ。 なんでこのタイミングで電話するんだ? (見張られている?) マジでそう思う時がある。 「はい?」 「竜!この忙しいのにドコほっつき歩いてるのよ!」 開口一番、馬鹿でかい声で怒鳴られる。 「俺、今日は休みですよ。」 「仕事があるときは休みなんて関係ない!人間、日々労働!」 ・・・無茶を言う。 「誰?」 純が聞いてくる。 「お前の姉ちゃん。」 純の顔が歪む。こいつが唯一苦手としている人物だ。 「・・・また仕事かな?」 「それ以外何がある。」電話の向こうではまだ仕事に対して熱く語っている。「ちょっと、竜!聞いてるの?」 「ハイハイ、聞いてますよ。」 適当に流す。 「ハイは1回!社会人として常識よ!」 電話の主は株式会社リアルルの社長『神鳴 響子(かんな きょうこ)』。 純の姉だ。 そして俺らのバイト先の恐ろしい上司でもある。 見た目は美しいし、お客の前では物腰静かなので、恐ろしいと言っても誰も信じてくれない。 「それで今何処にいるのよ?」 嘘をつこうかと思ったがやめておく。あとでどんな仕打ちをされるか分かったもんじゃない。 「渋谷です。」 「渋谷のドコ」 詳細な場所を伝える。 「今から行くわ。」 「・・・どうやって?」 「いつものとおりよ。」 「ちょ・・・待ってくれ!」 ブツッ・・・切りやがった。 「何だって?」 「今からここに来るそうだ。」 純の顔が引きつる。 「アレで来るの?」 「そうだ。」 「目立つよ?」 「俺に言うな。」
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