一話

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前園芹也<マエソノセリヤ>21歳。健一と同じ穂高芸術大学デザイン科に通う大学三年生。黒の短髪で、耳元にはピアスが光る。 健一の茶髪まじりの髪のおくからも、ちらちらとそれと同じ種類のピアスが伺えた。 芹也は、その鋭い視線からするりと逃げるように、本立ての隣にあるゴミ箱を見て言った。 「また牛乳?冬にカフェテリアであえて自販機のパック牛乳を飲む大学生ってどうよ……」 「うるせぇ、ほっとけ。でかくなりたいんだよ俺は」 そう言いながら、健一は自分より背の低い芹也を見下ろした。 すると今度は芹也が健一を睨み、 「何それ……嫌み?嫌みなんですか!?芹也君に対する嫌みですか!!?それはっ!!」 その問いには答えずに、にっこりと笑顔だけを向ける健一。心の中では、当たり前でしょとでもいっているかのようである。
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