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取り残された俺は、段ボールをチラリと見た。
人一人入れそうな大きさで、ガムテープが開け口に丁寧に貼られており、それ以外にはこれといって特徴の無いただの箱だった。
「…よいしょ。」
グッと腰に力を入れて持ち上げてみると、それなりに重くて少しふらつく。
なんとか持ちこたえ、段ボールの横から覗くような形で前を見る。
「…っと。」
階段を一歩一歩確かめるように上がっていく。
途中、階段を踏み外しそうになったが、なんとか無事に登り切った。
「なんなんだよ、ホント…。」
部屋に着くと途端に暖かい空気に包まれ、なんだか安心して俺は目を閉じた。
飛び込む様にしてベッドにうつ伏せになり、はぁぁ…と大きなため息をついた。
「よしっ、開けてみるか。」
らしくなく、気合いを入れて立ち上がると学習机の引き出しからカッターを取り出した。
「随分使ってなかったな…使えるのか?」
そう思い、控えめに刃を出してみる。案の定刃は少し錆びてしまっていた。
だが、切れない事はなさそうだ。
「ま、これくらいなら大丈夫だろ」
スッ、と開け口に刃を合わせる。すると収まっていた心臓がまた煩くなり始めた。
―…開けて良いのか?
ふとそんな考えが頭をよぎる。
だが体は正直だ。
俺はカッターを握り締めてガムテープを切っていく。
カチカチと時計の秒針が動く音が聞こえるくらい部屋は静かで、俺はいつになく集中していた。
やはり、刃が錆びていて切りにくい。なのでガムテープを切るのが思い通りにいかなくて、一刻も早く開けたいのにもどかしい。
やっとの事で切り終えると、俺はカッターを放り投げ、段ボールの開け口を両手で一気に開けた。
「―…なんだこれ。」
すると、信じがたい光景が俺の目に映った。
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