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「でさぁ、そこで―…」
ニコニコと笑いながら昨日の事を話す翔。俺は机に頬杖をつきながら話を聞いている素振りを見せる。
ああ、このまま死んでしまえばどれだけ楽なんだろうか、とかそんな考えが頭をよぎった。
「おい、聞いてるのかよ?」
翔が不満そうな声をあげて、眉を八の字にする。それでやっと我に返った。
「ゴメン、ゴメン、ちょっと聞いてなかっただけだよ…」
アハハ、と苦笑いを浮かべて自分の席から離れて次の授業の準備をしようと、教室の後ろの方にあるロッカーに教科書を取りに行く。
「わ、次数学じゃん!宿題あったけ?」
翔が肩に乗ってくる。
黒板の横にある予定表をみると、本当に数学だった。
「宿題は別に無いと思う。」
「良かったー…」
翔は、はぁ、と胸を撫で下ろすとめんどくさそうに数学の教科書をロッカーから取り出す。
「まぁ、もう次で授業終わりだしな」
「ま、そうだな。」
そして、休み時間を終わるチャイムが学校中に鳴り響く。
俺は自分の真っ黒の髪をボリボリと掻いて、机に俯せた。
眠い訳じゃない。
全てが俺には馬鹿らしく映る。
日常に刺激がない。
普通が一番良いと頭では分かっていても、日常に刺激が欲しいと心の奥底で思ってしまうんだ。
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