いち

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部活も終わり、電線に集うカラスが達がひっきりなしにぎゃあぎゃあと鳴き、せわしなく羽根をばたつかせる。 それが何故か気になり、空を見上げてみた。 陽は落ち、辺りは薄暗い。これが黄昏時というものなのか。 すれ違う人の顔が辛うじて見えるが、はっきりとは見えない。乗っている自転車のオートライトが車輪が動き出すと同時に弱々しく、途切れ途切れに光りだした。 道の脇にある街灯も点いてきてぃる。 それに伴って辺りはあっという間に暗くなってしまう。 しかも田舎だから、自転車で帰ろうと思うと森の直ぐ横を通らなくちゃならない。 夏は木々が影になりひんやりと冷たいから良いのだが、冬になるとその冷たさは凶器と等しい存在となりえる。 冬の冷たい空気を頬に感じながら俺は自転車を漕ぐ足を速めた。 着ている制服の隙間から入ってくる風に時々身を震わせ、俺は目を閉じた。 「…寒っ…」 視覚からの情報が無い分、寒さが存分に伝わってくる。 冷たい風で髪がなびき、表になった耳が冷えていくのを感じた。そっと耳に素手で触れる。 すると思ったよりも冷たく、びくりと身体が震える。 「あ、翔と一緒に帰る約束してたんだっけ…」 忘れてた。まあ良い。その内帰るだろ。 戻ろうとは微塵も思わず、俺はハンドルをぐっと握りしめて立って漕ぐ。 更に冷たい風に身体は震えたが早く帰って暖かい部屋に入りたくて、寒さに耐えた。 もう辺りは暗く、自転車のライトの灯りと、たまにある街灯だけが暗く闇に堕ちた道を照らしていた。 カラスや他の鳥達の鳴き声、 木々達の騒めきが聞こえず、 ただただ、車輪の動く音や俺がペダルを踏みしめる音だけが静かに誰も居ない道に飲み込まれていった。 それがまるで、これから起こる 哀しく 恐ろしく 虚しく 無惨な出来事の 前兆の様な気がした。
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