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竜児(N)
「永遠にも思えた数秒のあと、ぐっさりと心臓に突き刺さったまま揺らぎもしなかった彼女の視線が、ようやく蔑みを孕んで溶けた。」
大河
「竜、ね。……だっさ」
竜児(N)
「彼女に睨まれた瞬間、竜児はその瞳に襲い掛かる肉食獣の姿を見ていた。それはもちろんただの幻だが……。迫り来る、鋭い爪と巨大な牙。充満する獣臭と血の匂い。小さな彼女の数倍の大きさにふくらんだその幻のイメージは―――虎、だった。」
竜児
「あ、ああ……ああ、ああ、ああ……はいはいはいはい……」
竜児(N)
「はいはいなるほど、手乗りタイガー。誰が考えたか知らないが、」
竜児
「……ぴったり、じゃねえか……」
竜児(N)
「センスを感じる。感服する。そして彼女は自分を見て、竜、と呟き、蔑んだ。その竜児もすぐに知れた。尻餅をついた拍子にか、それとも幻の虎に引き裂かれたか、学ランの前が開いてしまっている。そしてシャツを透かし、泰子が張り切って買ってきたヤンキーセンス丸出しの『昇り竜Tシャツ』が丸見えになってしまっていたのだ。妙に恥ずかしくなって、慌てて前を閉じる。その前をスタスタと横切って行くのは、」
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