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実乃梨
「でも、これがなかなかうまくいかなくてねえ。固めるのが難しいんだ。なにしろでかいから、トローっとしたところとプリンプリンなところがこう渾然一体と……そうだ、高須くんにも見てもらおうかな~目玉突いちゃったお詫びの印に」
竜児
「えっ?……み、見る、って……」
竜児(N)
「もしかして、その手作りプリンの味を?この自分に味見をさせてくれるというのか?」
実乃梨
「うん。見て見て、今持ってくるから」
竜児(N)
「こんな幸せが待っていたなら、本当に目玉を突かれてよかった!いそいそと自分の席へ向かう実乃梨の背中を眺めながら、唐突に逃げ出したくなった。プリンなんかもらっちゃって、どんなツラでそれを食えばいいのか。昼休みでもないのに、男の自分がペちゃくちゃとプリンなんか食べていたらなんだか奇妙ではないだろうか。というかそもそも、もらったらその場で食うものなのか、それとも『ありがとう』と言って鞄にしまうものなのか。」
竜児
「わ、わからん……わからん……!」
実乃梨
「ハイ、高須くん。これどうぞ」
竜児
「……ほ、ほう。これはまた……」
竜児(N)
「予想していたよりもそいつは随分薄く、軽く……」
竜児
「……よく撮れた、写真で……」
実乃梨
「でも、気持ち悪いでしょ」
竜児(N)
「見て、と言われたのは味ではなく写真――それも相当気味の悪いものが写っている。ビニールの敷物の上にでかいバケツがドン、と置かれ、その中に薄黄色の死んだイカ……いや、スライムみたいなものが満タンに入っている。実乃梨には悪いが、どうしてもプリンには見えない。」
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