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大河
「……ひとに、ぶつかっておいて、謝ることもできないの……?」
竜児(N)
「どこからか静かな声が聞こえてきた。極端に感情の抑えられた、平板な、しかし爆発寸前のなにかを押し殺しているかのような、とても奇妙な語り方だ。声の主の姿は、ない。」
竜児
「え……?」
竜児(N)
「ほんの少しトワライライトな気分になって、ゆっくりと右手を見た。誰もいない。左手を見た。誰もいない。恐る恐る、1番怖い上を見た。……よかった、誰もいない。」
竜児
「ということは……」
竜児(N)
「果たして、それはそこにいた。目線のずっと、ずっと下だ。俺の胸よりもっと低いあたりに、そのつむじは存在していた。第一印象は『お人形』だ。とにかく小さかった。小さくて、長い髪がふんわりとその身体を覆っていて、手乗りタイガー。」
竜児
「……手乗りタイガー?」
大河
「誰が…………手乗りタイガー、ですって?」
竜児
「―――!」
竜児(N)
「一秒の、三倍ぐらい。無音状態だと思ったのは、しかし竜児の思い違いだったらしい。なにが起きたのか。わかっている。なにも起きてはいない。ただ――ただ、この、目の前の彼女が。」
大河
「……鬱陶しい奴……」
竜児(N)
「彼女が、二つの大きな眼球で、竜児を睨みつけただけ。それだけ。」
大河
「……ふん……」
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