第1話

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大河 「……ひとに、ぶつかっておいて、謝ることもできないの……?」 竜児(N) 「どこからか静かな声が聞こえてきた。極端に感情の抑えられた、平板な、しかし爆発寸前のなにかを押し殺しているかのような、とても奇妙な語り方だ。声の主の姿は、ない。」 竜児 「え……?」 竜児(N) 「ほんの少しトワライライトな気分になって、ゆっくりと右手を見た。誰もいない。左手を見た。誰もいない。恐る恐る、1番怖い上を見た。……よかった、誰もいない。」 竜児 「ということは……」 竜児(N) 「果たして、それはそこにいた。目線のずっと、ずっと下だ。俺の胸よりもっと低いあたりに、そのつむじは存在していた。第一印象は『お人形』だ。とにかく小さかった。小さくて、長い髪がふんわりとその身体を覆っていて、手乗りタイガー。」 竜児 「……手乗りタイガー?」 大河 「誰が…………手乗りタイガー、ですって?」 竜児 「―――!」 竜児(N) 「一秒の、三倍ぐらい。無音状態だと思ったのは、しかし竜児の思い違いだったらしい。なにが起きたのか。わかっている。なにも起きてはいない。ただ――ただ、この、目の前の彼女が。」 大河 「……鬱陶しい奴……」 竜児(N) 「彼女が、二つの大きな眼球で、竜児を睨みつけただけ。それだけ。」 大河 「……ふん……」
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