彼氏と彼女

8/17
前へ
/191ページ
次へ
HRを知らせるベルが鳴り響く。 それが鳴り終わる前に、俺達はそれぞれの教室に駆け込んだ。 立ち話は危険だ。 上がる呼吸をなだめながら思う。 朝から走るのはキツ過ぎる。 「よく間に合ったな。あんなにのんびりしてて」 机に突っ伏してると、前の席の戸板(トイタ)が声をかけてきた。 俺達が立ち話してる横を過ぎたらしい。 「なぁ、聞いた?新しい奴が来るらしいぜ、ここ」 そう言った戸板はなんだかソワソワしている。 入って来た時は気付かなかったけど。 周りも何だか浮足立ってるような…。 「女達が言ってたけど、ソイツ…」 ガラッ…。 戸板の声に、ドアが開く音が重なった。 担任と、もうひとり…。 そのもうひとりに、俺の目はくぎづけになった。 友…弥…? 間違いない。 あの友弥が目の前に立っている。 ざわめく声も、他の奴らの姿も。 友弥以外、目に入らない。 『ホントに大丈夫だよね?』 『心配ないよね?』 別れ際、真樹が言った言葉が頭の中でこだまする。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

908人が本棚に入れています
本棚に追加