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気を抜けばすぐに二度寝してしまいそうなほど体は睡眠を要求したが、そんな場合ではない。
頭の回転速度はみるみるうちに上昇し、意識が途切れる寸前のことをフラッシュバックのように思い出させたからだ。
月夜の公園。
迫る巨大なサメ。
整然と並び血に濡れた、歯。
無残に転がる、かつてヒトだった肉塊。
そして、自身の肋骨がひしゃげた音と感覚。
冷や汗が吹き出すまでに、時間はそうかからなかった。
暖房が程よく効いた個室で、俺は歯をガタガタいわせながら何かから身を守るかのように、体を丸めた。
忘れていた恐怖が今になって噴き出してきた。
あの日、自分はいつ死んでもおかしくはなかった。
その事実が恐ろしかった。
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