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「なんであなたなの!!!!?」
彼女の口から飛び出した言葉はもはや怒号に近かった。まるで全てを拒絶するかのように、周りの空気すら押しのける勢いだった。
俺が思わず思考を止めたのは、その迫力のせいだけではない。
──彼女の目尻から、涙が零れていたからだ。
「どうして!!? どうして!!? 私は、私はっっ──」
言葉の途中で彼女は下唇をギュッと噛み、泣くまいと必死に顔を強ばらせたが、それでも涙は頬をつたってポタポタと床まで落ちていく。
俺には彼女の涙の意味がわからなかった。
彼女を泣かせたことに対する自責の念とはっきりと現状を説明してくれない有紀へのもどかしさがあいまって、俺も言葉に詰まった。
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