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「あれ? 葉は?」
「ああ、アイツなら『上之宮祭に向けて世界観の構築に勤しむ』っつって家に引きこもってるぜ。今日も誘ったんだけどな、一応」
「一人で? 天見いるじゃん」
「その天見ちゃんが貸したディスクらしいから……」
「ん? 何々? 呼んだかな?」
さっきまで頬を膨らませていたのに、満面の笑みを浮かべた天見愛流がひかるの後ろから突然顔をだして会話に加わってきた。
気のせいか突き刺さる視線が更に鋭角になった気がするが、釘也は決してそっちの方向を見ないことを一人決意する。
決意せざるをえなかった。
「葉の話。今日来てないからさ」
「あー、あのディスク葉ちゃんがずっと観たがってたやつだからねぇ。出校日まで姿を拝めないんじゃないかな。皆で泳いでる暇なんか無いんでしょ」
「上之宮祭に向けて気合充分、ってことか」
「いや、葉ちゃん筋金入りのオタクだし」
自分のパートナーを散々に言いながら、愛流はけらけらと笑った。この暑さの中でブーツを自然と履きこなし、それでも汗一つかいていない爽やかさ満天の笑顔は太陽は地上にもあった、と言っても過言ではない。
つーか、今何か変なことを言ったぞコイツ。
「ちょっと待て天見、泳ぐって何だ泳ぐって」
「へ? 知らない? こう、両手を交互に回して波をかき分けたり」
「いや『泳ぐ』って行為が何なのかって質問じゃねえ」
陸上でクロールを実演する愛流を適当にあしらいつつ、先ほどのひかるの発言『裏方が宮沢君だけじゃ心細くって』と愛流の発言が点を線にし、符合させる。
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