プロローグ

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舞台の基礎を思念する“裏方が”必要。 無駄に面積だけあり、水分なんぞ皆無のグラウンドが集合場所。 体調を気遣ってくれたのに、必要以上に申し訳なさそうなひかるの態度。 生徒だけでは扱うのに許可の要るクァネ粒子を比較的容易に持ち出せる人物の存在。 長らく避けていた方向へ恐る恐る振り返ると、何かを超越して笑顔になってしまったパートナーの姿がそこにあった。 「玲菜……また粒子を勝手に持ち出したのか」 「原子レベルまで塵になりなさいな」 街を歩けば殆どの男性が振り返るであろう整った顔立ちを、更に笑顔で完全武装した学園理事長の娘、上之宮玲菜は会話のキャッチボールなど気にも留めず、素晴らしい微笑みで釘也に死刑宣告を言い渡した。 どうやら釘也の思っていた以上にご立腹らしい。 白を基調とした大人しめのワンピースが彼女の肌の白さを更に強調しており、現代の科学力を間違った方向に結集して作った次世代型ヒューマノイドです、と言われても釘也は驚かない。 それほど高い次元で完成された美がそこにあるからだ。 絹糸のような細さで、根元から毛先までその一本一本が職人の業と呼べるほどに艶のある金髪(ブロンド)の髪。 釘也の手の平大という小顔でありながら、大きく丸々とした両目は森の聖地を思わせる程に力のある深緑を帯びており、きっとクッキーをリスのように食べるんだろうな、と思わせるほどに小さな唇は水気皆無で室外サウナと化しているグラウンドにおいて尚、たっぷりと水気を含んでいる。
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