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「それで、誘惑ゲームってなんなんだ?」
当然気になるのはその内容だった。
「私ね。昔から男って大嫌いなのよ。下心丸出しで近づいてきたり、上っ面だけの表情は見てるだけで反吐が出そう」
会話すらまともにして無かったから知らなかったが、彼女は存外に口が悪かった。
見た目との齟齬(そご)に違和感はあったが、気になるのはそこではない。
会話が成り立ってない……。
「えっと……、質問が聞こえてなかったか?」
「いいから聞いて」
はい……黙ってます。
「だけど、ずっと独りってわけにもいかないしね。男が言う好きって言葉が本当なのか試してみようかと思ったのよ。男なんて女なら誰でもいいような気がするし」
それはないだろう。
世の中の男が全員そうって訳じゃない。
「俺は本当に好きで告白したんだ」
「だからそれを試すのが誘惑ゲームってわけ」
彼女は楽しそうに告げる。
まるで新しい玩具を手に入れた子供のようだった。
そして、
「じゃあ、このゲームのルールを説明するわね」
こちらの意思など関係無いかのように意気揚々と言い、更に続けた。
「まず一つ目に私には一切触れてはならない」
「え?」
「ただし、事故で触れてしまった場合と、私からの接触はオッケーとするわ」
「……」
えっと……。
どういう事……?
彼女が突然言い出した事は予想すらしていなかった事だったのだ。
「二つ目、私以外の女子であっても肉体的接触は駄目。簡単に浮気は駄目よ、って意味で考えてくれればいいかな。手が触れるとかそんな程度だったらノーカウントだから」
まぁ……その点は心配ないだろう。
彼女がいる状態で他の女に手を出すつもりなんてない。
「そして、私は色々な手を使ってあなたの事を誘惑する。それに屈して手を出してしまったらアウト。これがこのゲームで一番の醍醐味ね」
「なんだって……?」
思わずそう漏らしてしまったのは当然だった。
超がつくほどの美貌を併せ持つ彼女が、俺をあの手この手を使い誘惑するのだと言う。
それを耐えろって言うのか?
「期間は一年間」
「一年!?」
それは途方もない数字だった。
彼女が言っているのは、生殺しのまま一年間を過ごせと言う事。
付き合う為とはいえ、それは拷問のようなものにしか思えない。
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