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「じゃあ、一緒に帰ろう」
怜奈が近くに寄ってくると、微かな香水の匂いが漂う。
フルーツの様に甘く、それでいて大人の上品さを兼ね備えた優しい香りだった。
「そ、そうだな」
少し近くに居るだけなのに、血が逆流したかのように顔が真っ赤になってしまう。
俺は怜奈の顔を直視できなかった。
「勇太は今まで付き合った人とか居るの?」
学校を出てから少し経つと、横を歩く怜奈はそう問いかけて来た。
「いないな。怜奈は?」
「私も初めてだよ。ちなみに色々と、ね」
色々?
「色々って?」
「わざわざ言わせるつもりなんだ?意外と家畜……鬼畜だね」
わざとなんだろうなぁ……。
「まぁいいや。そういえば気になった事があるんだけど訊いてもいいか?」
「何?」
怜奈はふわりと微笑んで首を傾げる。
「あんなゲームを言い出したって事は、やっぱり俺の事を好きって訳じゃないんだろ?」
「うん」
予想はしていたものの、はっきりと告げられると心に響く。
めげちゃいけない……。
「なんで俺だったんだ? 今までの告白は全部断ってきたんよな?」
平静を装って俺が訪ねると、怜奈は正面を向いた。
「普通だったから」
「……え?」
その答えには戸惑いを隠せない。
普通だったから俺ってどういう事だ?
「勇太は特に遊んでそうってわけでもないし、特別ひどい顔って訳でもないから」
「要するに、本当に言葉の通りってわけか……」
「そっ」
怜奈はそう言うと、腕に掴まって上目使いで見てくる。
その瞬間、腕には彼女の柔らかい肢体の感触が脳髄を掻き乱していた。
はっきり言って、凄い。
何が凄いかとは言わないけど、とにかく凄かった。
うん、柔らかい。
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