空っぽな彼

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「凜ー!!どこー!!」 私は必死に凜の名前を呼ぶ。 すると、玄関の方から音がした。 私は玄関に向かったが、その時には既にいなかった。 「お父さん……なんてもん押し付けんのよ……今度帰って来た時一発ぶん殴ってやる」 こりゃ体力的にも精神的にもキツいなぁ…… 「あ、いた」 凜は何を思ったのか、電信柱によじ登ろうとしている。 私はため息をつきながら、凜を引きずり降ろす。 「はぁ……、とりあえず家に入りましょ」 言葉の意味を理解したのか、凜は軽くうなずく。 しかし、その直後に窓から入ろうとした事からして、どこから入るかは分かってなかったみたい…… 「いい?家は窓から入ったらダメ。ちゃんと玄関の扉から入りなさい」 これで分かってくれるだろうか…… (ドンッ!!) 分かってないみたい。扉に正面衝突しちゃってる。 これは幼児や猫よりも明らかに酷い…… というか私の想像では、少女マンガとかに出てきそうな性格も頭も見た目もパーフェクトなイケメン君に成長してると思ったのに…… 現実では未知なる謎の男の子に成長しちゃってるし……現実って厳しいね。 あ、今度は全力疾走で扉に激突した。 でも全然痛そうじゃない……さすが無表情。
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