全てを失った君

3/8
前へ
/18ページ
次へ
あの事故から一年。 旭が事故にあった日から僕は毎日旭の病室に通い続けていた ―――――――――――― ――――――― 『…大変 申し上げにくいのですが……』 一年前のあの日、旭の病室に担当医師の力ない声が静かに響く 『…旭さんはもう目覚めることは無いかもしれません』 『―――――――…え?』 僕はただ呆然とその場に立ち尽くした 『どういうことですかっ!? 旭はっ、旭は…っ!!』 旭の父親、 一条 遥希(はるき)さんは声を荒げて医師に掴みかかる しかし医師は、ただ申し訳なさそうに俯くだけだった 『…そんな…なんで旭が!?なんで、なんで…っ…』 遥希さんは力なく崩れ落ちた 『で、でも… まだ目覚める可能性はあるんです…まだ、絶望的なわけではありません』 医師の声に僕も遥希さんも顔をあげる 『ほ、本当ですか!?』 『ええ。ただ…』 ―――――――――――― ―――――――― 一年前のことを思い出しながら僕は今日もまた、旭の病室へ入っていく カタ… 本来、聞こえるはずのない旭のベッドから物音がした .
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加