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「……だ、れ…?」
僕の態度に戸惑っていた旭だったが、ハッと我に返って言った一言。
………嘘だろ?
…僕を……忘れて、る…?
さっきまでの喜びが嘘のよう。
だって、彼女は…
僕を忘れてるかもしれないから
でも、それは…
ずっと
前から分かっていた事なのに…
――――――――――――
――――――
『……ただ…、』
あの日、
医師は泣き崩れる僕達にひとすじの光を照らした
"旭が助かるかもしれない"という希望の光を。
…でも。
『ただ…目が覚めたとしても、今までの旭さんに戻ることはまずないでしょう…』
『…え……?』
『事故の衝撃で全身を強く打っているのは確かです。恐らく、脳にもその衝撃が伝わっています。』
……言葉にならなかった。
『目が覚めても最悪の場合は話す事が出来なくなったり、思考が働かなくなったりするかもしれません。良くても…何らかの後遺症が出ることは間違いないでしょう…』
――――――――――――
――――――――
あの日の事を思い出し、手に汗が滲む。
僕は旭に気付かれないように、ぎゅっとその手を握りしめた。
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