春 Ⅰ

3/17
前へ
/33ページ
次へ
そのがら空き席とやらに目をやると確かにその通りだった。 余りに気にしなさ過ぎて今日そこに席があったのかと初めて認識するぐらいで、でも特に何も思わなかった。 周りの人間の声に耳を傾けてみるとどうやら周藤というのは入学式すら来ていないらしい。 「プリントを届けてほしいんだが……誰か……」 もう生徒に聞く耳なんて無いと感じとった先生は申し訳程度な髪をがしがしと掻いてうーんと唸り、何故か僕を見た。何故? 「なあ、住所的にお前が1番近いんだよ。行ってくれないか?」 「……わかりました」 初めから指名すればいいものを、こいつは回りくどい。 面倒だったが、何しても暇な僕にとってこれくらいしてもいいかなと思う。思うだけだけど。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加