春 Ⅰ

9/17
前へ
/33ページ
次へ
「何か言いましたか」 「別に、何も言ってないよ?」 「今から階段ですので、気をつけてくださいね」 この暗闇の中何故お前はそこに階段があるとわかるんだ、と言いたくなった。 女の姿すら見えない、家でこんなに暗いなんて有り得るのか。 ……よくわからないが何だか凄くドキドキした。久しぶりにこんな気持ちになった、お隣りさんの悲鳴を初めて聞いた時とはまた違う感じがする。 そのまま手を引かれて、ゆっくりと階段を上がる。そしてドアのあく音がした、部屋に案内されたようだがやはり暗過ぎてまったくわからない。 「ここに、座ってください」 ここってどこだ……? 「さあ」 「っ!」 ぽんっと押されて座らされた所には椅子があり、腰掛ける形になる。この椅子は多分学校のコンピューター室にあるようなものだろう、手触りと座り心地がソレだ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加