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ふと考える。
黒い黒いこの部屋で、素の自分が引き出されるなんて思いもしなかった。
歩く音、こっちに近づいてきてるんだろう。
何も言わなくなった僕の輪郭をすっと撫でる手袋に包まれた指、周藤琴音の指。こいつは今どんな表情をしているのか……。
僕はその指を強く掴む。
「僕の話は終わりだ、ハル」
「ハル?」
「お前の事だ」
「私、琴音です」
「なんでもいい、お前は春が好きなんだろう?優しくて温かい春が、好きなんだろう?」
「おかしな事を言いますね、春が優しく温かいだなんて固定概念に過ぎないのに……」
「それでもこれはお前が言った言葉だ、ハル」
皮肉ですか、と一言呟くと
深い深い溜め息をついた。
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